古本のなおし方

本の修理について

 古本屋の私は、本をなおさない日はない。和本はともかく、洋装本がほとんどの現在、函や、背のゆるんだ本に糊を入れる程度の修理は店番をしながらの日課だ。どうせ修理するならうまく修理したいものだ。安い本ならともかく、高く仕入れた本が下手になおすとゴミになってしまうこともある。なおさない方が良かった、なんて修理はしたくない。本をなおすにも、少しの修行と大きな愛情が必要だ。それに、高価な本の修理を緊張しないでやり通せる精神力、修理の結果を自慢しない忍耐力も必要とされる。そこまでしても本の修理は必要なのかと言われれば、古本屋として、本へのささやかないたわりだと信じたい。
 何も古本屋だけのことではない。蔵書家の中にもコツコツ本をいたわっている人々がいるはずだ。そこで、ちょっとだけ本の修理法に触れてみたい。そもそも「正しい洋装本の修理法」なるものはなく、プロの製本屋でない以上、一人一人それぞれの方法があろうが、ここでは、私の修理法について述べたい。


使用する道具

修理の方法

  • グラシン紙を函にかける時は、液状ヤマトのりツインの細いほうで、天と地に使用します。

  • 函に使うのは基本的に木工用ボンドですが、接着させておさえておかないと広がったりしてしまうところには、速乾ボンドGクリアを使います。この時、速乾ははみ出すととても汚く、すぐ乾くので、はみ出さないよう最小の量だけつけるようにします。つける道具は、竹串やバーベキューの串のように細いものが良いようです。

  • 本の天にたまっているホコリは、靴磨き用のブラシを使います。ホコリが舞わないようにしたければ、ダスキンを使います。

  • カバーや函の汚れは、かたく絞ったぞうきんや消しゴムでけっこうキレイになります。ガンコな汚れには、800~1000番の紙やすりをかるくあてることもあります。

  • 切目などは、和紙の雁皮紙で貼り合わせ、その他に細川紙や典具帖灰煮も場所によっては使い分けます。一部の欠けについては、基本的には付け足しません。そのままです。

  • 古い値札シール等を剥すのには、ハガロンが有効です。ただ、多くつけすぎるとシミになったりしてしまうので、注意が必要です。

  • 輪ゴムやクリップは、ボンドが乾くまでしっかりと固定しておくのに使います。

  • 鋏は刃先9センチ位のものが1番使いやすく、大きいものと2丁使っています。

    他にもいろいろな方法がありますが、自分の修理法を自分なりに見つけてゆくのがベストだと思います。

まとめ


 私も独学で修理し、幾度となく本をバラバラにし、随分本をゴミにしてしまった。不器用な人になおされた本ほど、見ていてかわいそうなものはない。
 古書を愛する人は修理屋ではないので、基本的にはキレイな本を手に入れたい。だが、そううまくはゆかないものだ。今現在高値の美本は、高値ゆえに大切にされ、これからも美本のままでいる可能性が高い。しかし、ともするとこの世から抹殺されていたかもしれない痛んだ本を、少しでもいたわってやり、評価して、大切に本棚に入れてあげたい。
 決して新本のようにするのではなく、その本が歩んできた歳月を大事に残しつつ、自然のままに感じてもらえるように修理する。修理がうまければうまい程、その本は人がなおしたなどとは思いもしないはずだ。「影の修理人」そう思われてこそ、「古本屋の修理」と私は思う。
                            
  青木書店青木正一



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