ユーコさん勝手におしゃべり

11月28日
 秋だった。
 ジャストの紅葉を狙って周りを見歩いていたが、秋の景色はふと目を離したスキに冬に移行している。
 桜はおおかた落葉した。落ちて尚、赤を保つのはせいぜい一日ほどなのだろうか。紅葉と落ち葉は、夏の指先と冬の指先のようだなと、茶色くカサカサと地面に降り敷く落ち葉を見る。
 天も紅、地も紅の姿とうまく出会えぬ今年の晩秋だ。
 でもまだイチョウがある。
 朝晩寒くなったので、亀の水槽に安曇野で拾った桜の葉を入れてやった。背にのせてもぐったり、ひなたぼっこに出てきたり、楽しそうだ。
 追加のふとんはイチョウにしようと、またしばらく、きょろきょろと各所で輝く黄葉を眺め暮すだろう。

11月15日
 2週間ほど前に咲き初めた冬桜の様子を見に、堀切菖蒲園へ行く。冬桜は春の染井吉野に比べて花期が長く、優しい花を楽しめる。
 春は葉が出る前に裸の木に花をつけ、冬は裸になってから花を見せる。
 染井吉野は見上げる人のためにちゃんと下を向いて咲くし、葉が出てから咲く山桜は、葉に負けない豪華な八重の花を持つ。
 春といい、冬といい、桜の旺盛なサービス精神には感服する。
 雪囲いを施したぼたんにかわいいつぼみがついていた。季節は進み、また来春が来る。鬼は笑うかもしれないが、頬を緩めて、来春を期して球根を植えた平らかな土を眺めた。

11月12日
 すずめの食糧貯蔵庫を見た。
 うちの店の前には、細い道路越しに電信柱がある。ちょうど3階の窓を開けると目の前に変圧器が見える。
 今朝は天気が良かったので、窓を開けて外を眺めていた。変圧器のそばにすずめが一羽やってきた。すずめはしばらくきょろきょろとあたりをうかがってから、変圧器の下のパイプの中に入っていった。そして間もなく口に何か白いものをくわえて出てきて、電柱のすぐうしろの駅のホーム下へ飛んでいき、食べては戻ってきて、また変圧器の下からごちそうをくわえては近くで食べる。
 そのうちもう一羽やってきて、二羽で交替に出たり入ったりしていた。
 「すずめの食品貯蔵庫か」
 と一人楽しくなって、飽きずに見ていた。
 すずめは毎年たくさん生まれるけれど、最初の冬を越せずに大半が淘汰されるらしい。知恵と体力のある個体だけが、2年、3年と齢を重ねられる。その知恵の一端を、こっそり見せてもらった。
 日も短くなって、朝夕は冷え込むようになった。おととい所用で長野へ出かけた時、安曇野で桜の落ち葉を拾ってきた。オレンジ、赤、黄ととりどりに色づいた葉を持参のビニール袋に詰めて帰路についた。これは近いうちに、飼い亀の冬眠用のおふとんになる。昨日は冷たい雨が降ったが、今日は穏やかな好天で、まだもうしばらく、ふとんは必要なさそうだ。
 東京のイチョウがすっかり黄色くなったら、安曇野の桜の赤と混ぜて、冬眠用の水槽に入れてあげよう。

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